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2012年06月14日

「バスジャック事件が教えたもの(後編)」~致知~


『致知』2009年5月号 特集「執念」より
 山口由美子(不登校を考える親の会「ほっとケーキ」代表)
────────────────────────────────────
(前回のつづき)

塚本先生との出会いは、一番上の息子が
4歳の時にさかのぼります。
小学校の教員だった先生は、偏差値教育や受験戦争など
現代の学校教育のあり方に疑問を感じて退職。
独自に幼児教室を主宰され、
「この世に生まれて初めて出会う教師は母親である」
という考えから、子どもたちとお母さんのための教育に
専心しておられました。
先生は常々
「子どもは自ら育つ力を持って生まれてくる。
 大人はそれを援助するだけでいい」
とおっしゃっていましたが、
この教えが私の子育ての指針となり、
特に娘が不登校に苦しんでいた時代には
大きな支えになりました。

娘は小学校の時に不登校となり、
その後は通えたものの、
中学に入るとまた行けなくなってしまいました。
一番苦しいのは娘だと分かってはいるものの、
周囲から子育てが悪かったからこうなったと思われたり、
この子の将来はどうなるんだろうと不安になったりと、
親として娘を受け入れられない時期もありました。
しかし、
「子どもには自ら育つ力がある。
 大人はそれを援助するだけ」
という塚本先生の教えがあったからこそ、
娘が自分で立ち上がるまで待つことが
できたのではないかと思うのです。

       * *

事件から1か月半、私は広島の病院に入院し、
治療とリハビリに励みました。
結局、私は少年によって10数か所刺され、
場所によっては、あと少し傷が深かったら
死んでいたかもしれないとお医者様は言いました。
私自身、もしも床に倒れていたら、
間違いなく出血多量で死んでいたと思っています。
それゆえ、事件の直後は体のあちこちが
張り裂けるように痛く、あまりのきつさに、
いっそあの時死んでいればよかったと思うほどでした。

時間がたつにつれ、少しずつ加害少年の素性は
私にも伝えられました。
少年は娘と同じ17歳、高校は不登校の末、退学……。
「ああ、彼も苦しんでいたんだ」と思いました。
バスの中で、少年が最初に逆上して言ったあの
「俺の話を聞いていない!」という言葉。
きっと彼は十七年間、ずっと心の中で
「話を聞いてほしい」と訴えていたのでしょう。
しかし、それに耳を傾けなかった周囲の大人たち。
少年は事件によって加害者になりましたが、
それまではずっと大人社会の被害者だったのだと
感じたのです。


………………………………………………………………
その後、山口さんは「彼にも居場所があったら、
こんなことにはならなかったかもしれないね」という
友人の言葉を聞いて、小学校に通えない子供や、
成人して引きこもってしまった人などのために、
親子の居場所づくりを目指す会を立ち上げられます。
………………………………………………………………

死後、塚本先生は私やご遺族に
1つの言葉を残されました。
「たとえ刃で刺されても恨むな。
 恨みは我が身をも焦がす」

これは事故の直後に、先生のご子息が
「母の財布に入っていたおみくじの言葉です」と言って
教えてくれたものでした。
「母は遺された者たちの心のありようまで
 示唆して逝ってくれました」
とおっしゃった時、あの日の先生の驚いた様子を思い出し、
もしかしたら先生はきょうここで、
ご自分の命が尽きることを察知したのかもしれない。
そう思いました。
少年によって深い傷を負い、
いまも傷あとや後遺症が残る私が、
恨むどころか、少年のほうが被害者だと主張するのを聞いて、
「山口さんは強い」とおっしゃる方もいます。
しかし「恨みは我が身をも焦がす」という言葉を思うと、
実は私は楽な生き方を選んだのではないかと思うのです。
 そして、すべての出来事には意味がある。
事件もまた、私にとっては必要な出来事だったと
受け止めています。



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