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2013年10月03日

【人間の姿勢は一つでいい】(後編)


(前編)からのつづき


笹戸千津子(彫刻家)
『致知』2013年9月号  「致知随想」より
────────────────────────────────────

私が彫刻の道を志した当初、
まだ女性で彫刻をやる人は稀でした。

けれども父は、
これからは女性も手に職を持たなければならない、
と理解を示してくれ、

「おまえは特別才能があるわけではないから、
人より少しでも抜きん出たかったら人の三倍やりなさい」

と励ましてくれました。

私自身も、せっかく生まれてきたからには
自分をとことん試してみたいと思い、
自ら土日もなく佐藤先生のアトリエに通い詰め、
作品審査では必ず他の方より多く出品し続けました。

先生も私の意気込みに応えてますます創作に熱中され、
二人で競うように作品に取り組み続けたものです。

アトリエでは先生の粘土練りや心棒づくりをお手伝いしながら、
概ね午前中に自分の作品制作を行い、
午後は先生のモデルを務めました。

モデルを務めている時間は当然自分の作業はできませんが、
先生が制作に呻吟される姿を直に拝見するのが、
何物にも代えがたい勉強でした。

作品に向かう先生の姿勢は大変厳しく、
道具や粘土を粗末に扱うと厳しく叱責されました。

また、彫刻に男も女もない。
男に手伝ってもらおうと思った瞬間から負けが始まる、
と女性にも一切甘えは許されませんでした。

若い頃は

「こんなみっともない作品を
僕のアトリエに置いてもらったら困る」


と完成間近の作品を壊すよう命じられ、
涙に暮れた体験は数え切れません。

けれども先生は、一度制作の場を離れると
実に温かい思いやりを示してくださいました。

「世の中には低姿勢とか高姿勢って言葉があるけれども、
人間の姿勢は一つでいいんだよ」

と、どんな偉い方にもへつらわず、
また職人さんやお手伝いさんにも細やかな心遣いを示されるので、
面会した人は誰もが感激し、先生の虜になりました。

こうした先生の姿勢は、幼くして
父親を亡くし他家へ書生に入り、また先の大戦で応召し、
三年間もシベリアで抑留生活を送られた
ご体験とも無関係ではないでしょう。

イギリスに彫刻家のヘンリー・ムーアを訪ねた時、
既に晩年で病床にあったムーアが、
きちんとネクタイを締めて応対してくれた姿勢に感銘を受け、

「隣人へのいたわりや優しさのない人間が創る芸術は、
すべて嘘と言ってもいい」

と繰り返されていました。

学生時代に師事した朝倉文夫先生から

「一日土をいじらざれば一日の退歩」

と教えられた佐藤先生は、講演会などで若い学生から、

「佐藤先生のような素晴らしい作品を
創作するにはどうしたらいいですか?」

と質問されると決まって、

「コツはただ、コツコツコツコツやることだよ」

とユーモラスに答えていらっしゃいました。

生涯水平飛行を願った先生ですが、
それは極めて辛いことだともおっしゃっていました。

それでも先生は毎朝八時過ぎには必ずアトリエに入り、
生涯休むことなく活動を続けられました。

私もこの偉大な師の志を継ぎ、
命の炎が尽きるまで
創作活動に打ち込んでゆきたいと願っています。





タグ :致知

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