2013年07月15日
【近隣の帝国主義国家(全6回)】①
【日本人なら知っておきたいことシリーズ】
渡部昇一(上智大学名誉教授)
『致知』2012年11月号
連載〔歴史の教訓〕より
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事実に基づかず、何よりも政治的利益を優先させて歴史認識を形成し、
力ずくで他国の領上を切り取る。これを帝国主義という。
日本の周辺にあるのはそういう帝国主義国家なのだと心得、
腹をくくって付き合っていかなければならない。
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◆ 日本は舐められている ◆
民主、自民両党の党首選び。目本維新の会の発足と国致への進出。
そして近づく総選挙。激しさを増す政局の中で本稿の筆を執っている。
政治評論の専門家ではない私にとって、致局かどのように動き、
どのような形が出現するのかは予想の外だか、日本が一つの正念場に
差し掛かっている、という実感は強い。
それだけに日本がここに至った状況を整理し、これからの方向を
見定めるのはいまがチャンスなのだ、という思いもしきりにする。
その意味でもいまは正念場なのだろう。致権交代の華々しい掛け声の
中で民主党致権が誕生したが、以後、はっきりと変わったものかある。
日米同盟関係の緩み、友びである。民主党政権で最初に登場した
鳩山首相は、日本国土は日本人だけのものではないと言い、
沖繩の普天間基地はできれば国外へ、少なくとも県外へ、とやった。
これによって白民党致権下で十数年をかけて議論を重ね、
固まっていた普天間基地の辺野古への移転は宙に浮くことになった。
これは菅、野田両内閣にも受け継がれ、いまだに問題解決の芽さえ
見えていない。さらに言えば、米軍の垂直離着陸輪送機オスプレイの
沖繩配備に対する反対運動である。
これら一連の動きをアメリカの視点で捉えれば、
どういうことになるのか。
日本にとって米軍基地は邪魔なのか、安保条約は不必要なのか、
となっても不思議はない。
日米安保条約はアメリカにとっても重要だから、ただちに条約を
どうのこうのということにはならないが、日本に対して一歩退いた
冷ややかな空気が醸成されるのは避けられない。確かにそういう
空気が出かけている。そして、日本の周辺諸国にとっては
これ以上の明確なメッセージはない。
その反応は早速。に現れた。
それが尖閣諸島、竹島、北方四島と頻発する領土問題である。
尖閣諸島では領海を侵犯した中国漁船を退去させようとした
海上保安庁の巡視船に、逆に中国漁船が体当たりするという
事件が起こった。しかもである。
中国の船長以下船員全員を逮捕し、船体を拿捕したにもかかわらず、
菅内閣はろくに調べもしないでそそくさと中国に帰してしまった。
北方領土ではロシアのメドページェフ首相がわざわざやってきて、
ここはロシア領だと高言し、北朝鮮や中国から労働者を呼び込んで
インフラ整備を進めていることを隠そうとしない。
竹島では韓国の李明博大統領か上陸してみせるというトチ狂ったと
しか思えないパフォーマンスをやって見せ、勢い余ってか、
天皇は訪韓し土下座して謝罪すべきだと暴言を吐き、揚げ句に
野田首相からの親書を突き返すという外交上考えられない暴挙をやった。
考えてもみるがいい。
自民党政権下の日米同盟関係が緊密であった時期、
このようなことが起こり得ただろうか。各国はアメリカに
配慮せざるを得なかったし、またアメリカの牽制も働いていた。
だがいま、各国は日米同盟関係の綻びを見てとって
舐めてかかっているのだ。日本は舐められている。
これが民主党政権下で出てきた状況である。
もう一つ、言っておかなければならないことかある。
日本の国防力の相対的低下である。例えば二十年前を考えてみよう。
中国の海軍はあって無きに等しく、空軍も目本の航空自衛隊に
太刀打ちでぎるものではなかった。核兵器やミサイルを除けば、
通常戦闘能力では目本の足元にも及ぶものではなかった。
だがこの二十年間、中国は20%増に次ぐ20%増の莫大な軍事予算を
注ぎ込み、軍拡に邁進してきた。
一方の日本は足踏み状態、人員の削滅など、むしろ後退傾向にある。
その結果は逆転とまでは言わないか、彼我の国防力は桔抗、
中国は通常戦闘能力でも桔抗以上のものを有していると
自信を深めてきている。それか海洋進出となって目にっくようになり、
領土問題などで居丈高な態度となって表れているのだ。
この国防力の問題も背景の一つとして知っておく必要かある。
将来のことを考えておかなければならない。
東日本大震災の被害では、危険性というものを
看過していたところと、そうでないところで大きな差が出た。
「釜石の奇跡」然り、岩手県普代村の昔の村長が
反対されながらも作った巨大な水門と堤防の効果もまた然り。
今、尖閣などの前線ではちょっとしたきっかけで何が起こるか
分からないのでは、無いでしょうか。
もし、この先10年20年経っても、今の状態で推移すると
安穏と構えているのは少々危機感が足らないのでは
ないでしょうか? 私はマスコミではないので、
徒らに人を煽る気はさらさら無いですが、限られた情報の
中でも、現実(相手・状況)を見て心構え、備えは必要だと
感じます。
米国は自国の国益に適うなら、同盟に相応しい態度を
取っていくでしょうが、いざという時にどこまで対処するのか?
それは日本次第でしょうし、何十年先には米国が当てに
ならない状況に陥いる可能性も無いとは言い切れないでしょう。
その時、備えをしていない日本など、中国からすれば
格好の獲物です。相手の先制攻撃が無ければ、
今の自衛隊は実質何もできないのですから。
中国の挑発に対して、緊急発進している自衛隊機(戦闘機)は
そうした危機にさらされていると言っても過言ではないでしょう。
そういう意味では、正に人身御供です。
②につづく
Posted by 木鶏 at 21:00│Comments(0)
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